日本では音楽の鎖国という時期がある。
1940年~1945年(終戦)までである。
正確には、1942年から1945年まで。
この時期、政府情報局を通じ、以下のような文が発せられる。
「大東亜戦争(太平洋戦争のこと)もいよいよ第二年を迎え、今や国を挙げてその総力を
米英撃滅の一点に集中し、是が非でもこの一戦を勝ち抜かねばならぬ決戦の年となりました。
大東亜戦争は、単に武力戦であるばかりでなく、文化、思想その他の前面に至るものであって
、特に米英思想の撃滅が一切の根本であることを思いますと、文化の主要な一部門である
音楽部門での米英色を断固として一掃する必要のあることは申すまでもありません」
簡単に言うと、戦争も終盤にかかり戦局が悪いので総力戦のため、文化、特に音楽の
規制をする、というもの。
さらに、
「演奏を不適当と認める米英音楽作品蓄音機レコード一覧表を作って、全国の関係者に
配布し、米英音楽を国内から一掃し、国民の士気の昂揚と、健全娯楽の発展を促進する
ことになりました」特に敵国の米英音楽を規制するというものである。
クラシック音楽はドイツ、イタリアも同盟国なので除外されたらしい。
さらにこのパネルが何ともすごい。
そして、
「米英系音楽としてわが国に輸入され、また最も多く一般になじまれたものは、なんと
言ってもいわゆるジャズ音楽と民謡調の歌曲とであります。
しかし米国系音楽の代表とみられるジャズや、これに類する軽音楽の大部分は、卑俗低調で
、退廃的、煽情的、喧騒的なものであって、文化的にも少しの価値もないものでありますから、
この機会にこれを一掃することは極めて適切であり、また絶対に必要なことであります」
米英音楽、特にジャズ音楽は価値のないものなので、特に規制をするというもの。
規制のリストが以下である。
「ダイナ」「私の青空」「アラビヤの唄」に代表されるジャズ音楽、「ロンドン・デリー」
「麦畑」「ヤンキー・ドゥードル」「アニー・ローリー」「アメリカン・パトロール」
「懐かしのケンタッキー」「オールド・ブラック・ジョー」「スワニー河」
「ラプソディ・イン・ブルー」「峠の我が家」「アレキサンダー・ラグタイム・バンド」
「月光価千金」「セントルイス・ブルース」「南京豆売り」「アロハ・オエ」その他・・・。
何ともジャズは例に及ばず、ラテン音楽、ハワイアンまで入っている。
この規制は終戦まで続くが、その後反動のように熱狂的なジャズ音楽のブームがやってくる。
なんでもありの現代からは想像できない世界の事であるが、
約80年前の日本の事である。